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日本相撲協会は1日、大相撲名古屋場所(14日初日、愛知・ドルフィンズアリーナ)の新番付を発表し、新関脇昇進を果たした大の里(24=二所ノ関部屋)が愛知県安城市の宿舎で会見した。大関獲りの可能性がある今場所に懸ける思い、そしてこの日で発生から半年を迎えた能登半島地震の被災から復興を目指す故郷・石川への思いも語った。
強い覚悟の表れからか、大の里は会見中ほとんど笑顔を見せなかった。新小結だった夏場所で初土俵から所要7場所の史上最速優勝を果たし、逸ノ城に次ぐ昭和以降2位タイの速さで新関脇昇進。数々のスピード記録を打ち立てながらも「まだ入門して2年目なので、これからだと思う」と表情を引き締めた。
今場所優勝または優勝に準ずる成績を残せば、初土俵から所要8場所、新入幕から4場所でともに史上最速となる大関昇進の可能性が高まる。「また次に目指せるものがあるので、今場所が大事になってくる。しっかりアピールして一生懸命頑張ります」。重圧を感じないよう「考えすぎると硬くなるので、その(大関の)2文字は頭に入れていない」と平常心を装ったが、会見中に何度も繰り返した「今場所が大事」という言葉に強い決意がにじんでいた。
能登半島地震の発生からこの日でちょうど半年。6月2日に金沢市で開かれた初優勝祝賀会の前には、師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)とともに同市内の避難所を慰問した。「凄く喜んでくれた。結果を残してまた喜んでもらえるように頑張りたい」と被災地への思いを強めていた。
7日には優勝後初めて故郷の石川県津幡町に凱旋し、祝賀パレードが行われる。初日まで1週間と迫る中、稽古に支障がないように日帰りで駆けつける予定だ。震災から半年たってもなかなか復興が進まない地域もあるのが現状。津幡町役場の担当者は「パレードを行う一番の理由は、復興への希望。石川県全体を明るくしてほしい」と地元のヒーローに期待を寄せた。
大の里は震災直後の初場所、新入幕でいきなり優勝争いに絡む大活躍。そこから3場所連続で三賞、そして初優勝と明るい話題を届け続けてきた。「一生懸命頑張る姿を石川県の皆さんにしっかり見せたいと思います」。大相撲の歴史を塗り替える史上最速大関昇進へ、24歳の挑戦は故郷に大きな力を与える。 (前川 晋作)
【能登半島地震後の大の里経過】
▽初場所 新入幕で11勝を挙げ敢闘賞受賞
▽2月6日 石川県庁や県内3カ所の避難所を慰問。内灘町では祖父の坪内勇さんと再会
▽春場所 前頭5枚目で11勝を挙げ敢闘賞と技能賞を受賞
▽4月6日 春巡業福井場所と富山場所の間に金沢市内で地元関係者らと食事会
▽夏場所 新小結で12勝を挙げ初優勝
▽6月2日 金沢市内で初優勝祝賀会。会の前には金沢市内の避難所を慰問し、卯辰山相撲場で大会に参加していた小中学生を激励
【復興遅れる被災地…がれきだらけ】
石川県で震度7を観測した元日の能登半島地震の発生から1日で半年となり、被災者らは複雑な思いや不安とともに一日を過ごした。「あっという間の半年」「まだ何も考えられない」。地震発生時刻には各地で犠牲者に祈りをささげる人の姿があった。
大規模火災があった輪島市の輪島朝市周辺では激しい日差しが照り付ける中、市朝市組合員ら12人が約1分間黙とう。がれきだらけの景色は今も変わらない。冨水長毅組合長(55)は「改めて地震の風景や記憶がよみがえった。あっという間の半年。朝市通りで朝市を復活させられれば」と早い復興を願った。岸田首相は同市の県出先機関内で開かれた復興タスクフォースの発足式に出席。「復興の課題を霞が関一体となって解決する」と述べた。
地震の犠牲者は建物倒壊などによる直接死229人に加え、避難中に体調を崩すなどして災害関連死と認定された52人、関連死の認定が決まった18人を含め、計299人となる見通し。輪島市では3人の行方が分かっていない。
《遠藤 1場所で幕内復帰》
○…石川県出身の遠藤と輝がそろって幕内に返り咲いた。穴水町出身の元小結・遠藤は、十両転落から1場所で復帰。故郷に甚大な被害をもたらした能登半島地震から半年の節目に、33歳のベテランが被災地へ吉報を届けた。8年ぶりの十両で臨んだ先場所は「僕ができることを精いっぱいやる」と話し、初日から10連勝するなど12勝3敗。両膝痛を抱える中で終盤まで優勝争いに加わり、健在ぶりを示した。復興への願いを胸に秘め、人気力士が再び幕内での戦いに挑む。
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