東京女子医科大(東京都新宿区)の同窓会組織「至誠会」が、卒業生の親族向けの推薦入試で保護者らから寄付金を受け取っていた問題で、この推薦制度の導入を提案したのは至誠会前代表理事の岩本絹子・同大理事長だったことが関係者への取材で判明した。私大の入学に関して大学や関係者が寄付を受け取ることは文部科学省が禁じているが、岩本氏は「社会貢献」と位置づけ正当化していたという。
卒業生の親族向けに実施されていたのは、卒業生が3親等以内にいる受験生を対象とする「至誠と愛推薦」で、2018年度に始まった。この枠で受験生が大学の選考に進むには至誠会の推薦状が必要で、至誠会が寄付の意向や過去の寄付実績を尋ねるなどしていた。
岩本氏は当時、至誠会の代表理事で大学では副理事長だった。関係者によると、岩本氏は卒業生らから「他の私立大医学部では卒業生の親族向けの推薦枠がある。何とかならないか」などと要望を受け、親族向け推薦枠の新設を提案したという。
また、至誠会が運営する病院や大学の経営状態が悪化しており、立て直しの名目で卒業生らから寄付を積極的に募っていた。推薦枠を設けることで、寄付を効率的に集める狙いがあったとみられる。
学内から岩本氏に「寄付が入試に絡むと社会的に理解を得られない」といった意見も寄せられたが、岩本氏は「社会貢献だから問題ない。至誠会は公益事業をしており、そのために金を取って何が悪いのか」などと主張し、忠告に耳を貸さなかったという。
19年に発行された至誠会の機関誌で岩本氏は「女子医大は卒業生の子女の入学率が全国で最低であるため、日ごろ支援をいただいている卒業生の子女に優遇枠を設けたいと大学にお願いした」と推薦枠新設の背景を説明。「文科省の許可を得て3年がかりで実現した」とアピールし「受験生本人だけでなく、至誠会員について、活動歴や行事の出席状況なども拝見させていただく」としていた。
岩本氏は同年、大学の理事長に就任した。至誠会の代表理事でもあるため、推薦状の推薦者と宛先の双方に岩本氏の氏名が記載された時期もあった。一方、23年には不適切な契約で大学に損害を与えたとして刑事告発され、至誠会の代表理事を解任された。
大学は24年1月、「卒業生子女推薦」に制度変更すると発表。25年入学者の入試から至誠会による推薦は不要になった。文科省は寄付の受領などについて大学に事実関係を報告するよう求めている。
大学広報室は「第三者委員会で検証中のためコメントは差し控える」としている。【井川加菜美、斎藤文太郎】
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