バイデン米大統領は17日、先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席するため米国を出発し、18日に広島入りする。債務上限引き上げを巡る野党共和党との交渉難航でサミット後の外遊予定を中止したのは、米ドルを基軸通貨とする国際金融システムを揺るがすのを避けるためだ。苦渋の選択だが、中露の力による現状変更の阻止を目指す中で、バイデン政権の指導力の後退も懸念される。
クアッドは広島で対面会合
バイデン氏は「自由で開かれたインド太平洋」実現に向けたネットワーク強化のためG7後にパプアニューギニアで太平洋諸国の首脳らと会談し、オーストラリアで日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」首脳会議に参加するはずだった。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は米国がデフォルト(債務不履行)に陥れば、「中国やロシアが米国の信頼性をおとしめるのを助ける」と本紙に語り、債務上限を巡る交渉を優先せざるを得ない事情を強調。内政課題に縛られるバイデン政権の現状を映し出した。
ただ、クアッドの4首脳は広島で対面会合を開く方向となった。バイデン氏としては、唯一の訪問先に絞った広島で指導力を発揮できるかが重要となる。
岸田首相と擦り合わせへ
国際政治の焦点は今、ウクライナ軍がロシア軍に対し着手する反攻の行方だ。ゼレンスキー大統領はサミットでビデオを通じ支援拡大を訴え、バイデン氏は攻勢を物心両面で支えるメッセージの発信を主導する構えだ。共和党強硬派が支援に消極姿勢を強める中、ウクライナが攻勢で成果を出せなければ、消極論が一段と増す恐れもある。
中国を巡ってバイデン氏は衝突回避を最優先する一方、グローバルサウス(南半球を中心とした新興国・途上国)に中国が覇権を広げる事態を「世界秩序の塗り替え」と強く警戒する。
さらにマクロン仏大統領が先の中国訪問で習近平国家主席との協力強化に動いた後だけに、台湾問題を含め中国の威圧行為や現状変更の試みは許さないと、G7の結束を示すことは極めて重要。バイデン氏は18日の岸田文雄首相との会談でそうしたメッセージの基調を擦り合わせる考えだ。(渡辺浩生)
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