頑張れ、一生懸命やりなさい、努力すれば報われる……これまでの人生で、何度も自分自身にもそう言い聞かせてきた、という人もいるだろう。それでも、いつまで頑張ればいいのか、頑張ってもどうにもならないかもしれない、と不安を感じている人に手に取ってほしいのが『あやうく一生懸命生きるところだった』(ハ・ワン:著、岡崎暢子:訳/ダイヤモンド社)だ。
同書は、“頑張って生きる”のをやめた著者のハ・ワン氏が、独自の人生哲学をつづったエッセイ集。韓国で25万部を売り上げ、人気アイドル・東方神起のユノさんが愛読していることでも知られる同書の日本語翻訳版が発売された。
著者は現在、昼過ぎに起床して昼食を食べ、本を読んだりビールを飲んだりしながらダラダラと過ごしている。主な収入源はイラストを描いて得る報酬のみ。それほど大量にイラストの仕事があるわけでもなく、生活費が足らないときは貯金を切り崩す毎日。
今では見る影もないが、ハ・ワン氏は以前、会社員として働きながらイラストの仕事もする兼業イラストレーターだった。働き者だったのだ。
三浪して第一志望の美大に入ったものの、実家が貧乏なので学費を稼がねばならず、アルバイトに明け暮れて充実した学生生活も送れなかった。社会に出てからもダブルワークまでしているのに、自分の暮らしは少しもよくならない。むしろ不幸になっている気がする……。そしてついに、精も根も尽き果てた彼は40歳を迎える年に“一生懸命生きない人生”を選んだのだ。
彼は、自身の過去や現在、家族や結婚への考え方など、さまざまな事柄に思いを巡らせる。
たとえば、自身の仕事について。イラストレーターという彼の職業を知ると、決まって「好きな仕事ができて、うらやましいですね」という言葉をかけられるという。しかし、当の本人はイラストレーターを目指していたわけではなく、絵を描くのが好きというわけでもない。ただ「なんとなく、絵を描いてごはんを食べるようになった」だけだったのだ。彼にとって絵はあくまで“仕事”であり、それ以上でもそれ以下でもない。絵を描くのが好きだった時期もあるが、仕事になった途端にそれほど好きではなくなってしまったという。
人によっては「本当に好きなことは仕事にすべきではない」と忠告する。
だが一方で、ある人は「本当に好きなことこそ仕事にすべきだ」と忠告する。
一体どうすりゃいいんだ?
どちらも選ぶのは自分次第だが、たぶんどちらを選んだとしても後悔しそうだ。
人間は欲の多い生き物だから。
たしかに“イラストレーター”のようなクリエイティブ職に対して「好きなことを仕事にしている」というイメージを抱いている人は多い。しかし、本当にその仕事が好きかどうかは本人にしかわからない。私たちが、いかに固定観念に囚われながら他人を見ているかがわかるエピソードだ。
ほかにも、同書には結婚をしない理由やくたびれたパンツを見て思ったことなど、一生懸命生きるのをやめたからこそ見えてきた新たな“視点”がちりばめ られている。『あやうく一生懸命生きるところだった』は、走り続けて自分を見失ってしまいそうな人に、少し人生の速度を落とすきっかけをくれる一冊だ。
文=丸井カナコ
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January 24, 2020 at 05:22PM
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あの韓国人気アイドルが愛読している!? 一生懸命生きるのをやめて見えてきた、新しい世界 - ダ・ヴィンチニュース
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