国公立大2次試験の前期日程が25日、全国の大学で始まった。国際競争力が求められるなか、東京大や大阪公立大は一部の学部で欧米で主流の秋入学を取り入れる考えを表明した。今後、他校にも波及する可能性があるが、国内の受験生の支持を得られるかどうかは不透明だ。(玉崎栄次)
「国際化と多様性。教育力は経済成長の根幹であり、英米の大学の強さはそこにある」。明治安田総合研究所フェローチーフエコノミストの小玉祐一氏はこう説明する。
英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が昨年9月に発表した「世界大学ランキング」(2024年版)では、英米が10位までを独占。13年に「今後10年でトップ100に10校以上」を目標とした日本でランクインしたのは、東大(29位)と京都大(55位)だけだった。
国際的な競争力を強化するには、世界水準の優秀な研究者や留学生の確保が必要だ。政府が掲げる40万人の外国人留学生受け入れの実現は大学の魅力づくりが鍵となる。
コロナ禍で断念
大学側の動きも活発化している。今月20日には、東大が27年度から大学4年と大学院修士1年の5年制の新課程を設ける計画を発表。秋入学として、定員(100人程度)の半数を留学生に充て、授業を英語で行う。
その直前には、大阪公立大が27年度から大学院と工学部など一部の学部で先行的に秋入学を導入する方針を表明。大阪府の吉村洋文知事は将来的に大学の公用語を英語にしたいとの考えも示した。
秋入学が普及すれば、欧米など主要国からの留学を受け入れやすくなる。一方、国内では、春の高校卒業後の過ごし方や企業の採用活動との調整が必要となりそうだ。
秋入学は新型コロナウイルス禍の一斉休校を受け、政府の検討が行われたが、財政負担の大きさなどから見送られた。ただ、小玉氏は「秋入学が定着すれば、企業の採用時期なども変わるだろう」と推測する。
志願者減少も
授業の英語化も受験生に影響を与えそうだ。例えば、国公立大の工学部の授業が全面的に英語化されるとすると、河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は志願者が減少すると予想する。
近藤氏は「理系志願者は英語や国語に少なからず苦手意識を持っている。その多くは英語で授業を受けるイメージを持てないだろう」と話す。
とりわけ、地方自治体が設置する公立大は、それぞれの地域で大学教育機会を提供するという役割を担っている。国際化によって、その使命に弊害が出ては本末転倒だ。
近藤氏は「各大学が設立の意義を踏まえて丁寧に制度設計を行い、受験生や保護者に分かりやすく発信していく必要があるだろう」と指摘した。
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