<大相撲初場所>◇6日目◇19日◇東京・両国国技館
師匠の背中を追ってつかんだ初白星だ。西前頭2枚目の阿炎(29=錣山)が、大関豊昇龍を引き落とし、初日からの連敗を「5」で止めた。
昨年12月17日、父のように慕っていた師匠の錣山親方(元関脇寺尾)がうっ血性心不全のため60歳で死去。今場所は連敗しても、師匠から言われ続けた「元気な相撲」を貫き、天国の恩人にささげる“銀星”を挙げた。関脇琴ノ若が敗れ、三役以上の全勝は不在となり、全勝の前頭朝乃山が単独先頭に立った。
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教えを貫いた。負け続けても愚直に同じ立ち合い。師匠譲りの突っ張りと「真っ向勝負」の精神で、阿炎は豊昇龍に挑んだ。のど輪で上体を起こすと、相手が強引に前に出ようとしたのを見計らい、絶妙なタイミングで引き落とした。今場所は、相手の突進をいなしたことはあったが、明らかな引きやはたきはこれが初。序盤5日間の前に出続ける姿が布石となり、初白星をつかんで再出発を切った。
阿炎 「師匠なら『手が回っていない』と言うと思う。でもあきらめず、元気な相撲を取っていれば怒られなかった。勝ち負けじゃない。『とにかく一生懸命やれ』が師匠の口癖」。
かつては引きやはたきも多く、優勝した22年九州場所も貴景勝、高安とのともえ戦の優勝決定戦は、立ち合い変化も駆使した。それが今場所は、前日5日目まで前に出ることに徹した。兄弟子でもある師匠代行の立田川親方(元小結豊真将)は言う。「今場所の阿炎は『師匠に恥ずかしくない相撲を』という思いが一段と強い。部屋でも積極的に若い衆に声をかけている。責任感が強くなった」。
錣山親方は生前、阿炎を「俺は足元にも及ばない才能の持ち主」と評していた。だからこそ新型コロナのガイドライン違反が発覚した際は、一緒に頭を下げて解雇などの厳罰を免れ、3場所出場停止などにとどまった。彼女ができたことを報告すると、そっと部屋の合鍵を渡し「あんまり遅くなるなよ」と多少の門限破りを許容してくれたこともあった。「本当のオヤジみたいだった」(阿炎)。大好きなオヤジに「いい相撲だったぞ、洸助(本名)」と言われたくて、今まできた。もう褒めてはくれない。同時にやっと別れの言葉を言える。阿炎の顔は晴れやかだった。【高田文太】
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