東京都立川市長選は、都議会立憲民主党元団長の酒井大史さんが新人5人の争いを制し、自民が推薦する都議会自民党元総務会長の清水孝治さんは敗れた。同市長選の告示時点では、東京での自民と公明の選挙協力は破綻状態。清水さんにとっては、前半戦に公明の支援を受けられなかったことが響いた。(岡本太、宮本隆康、戎野文菜)
◆「もう負けだ」
「あぁ、じゃあもう負けだ」。清水さんは酒井さんとの票差を聞いてぽつりとつぶやいた。「申し訳ございませんでした」。3日午後10時40分ごろ、立川市高松町の事務所で、支援者ひとりひとりと握手を交わし、謝罪した。「いまだかつてない大きな支援をいただいた結果。残念でならないが、悔いはない。やるべきことはすべてやりきった」
清水さんは過去の都議選で酒井さんと何度も対決し、僅差で勝敗を分けてきた。
ところが今回は当初から旗色が悪かった。自民党内の候補者擁立が難航した上、5月には衆院選の候補者調整を巡って自公が対立。立川市長選は、自公の選挙協力が破綻状態で迎える初の都内首長選となった。
清水さんは出馬会見で「長い間に培ってきた友情は決して失われないと信じている」と語ったが、公明の反応はつれないままで、自主投票を決定。清水さんは、街頭演説で酒井さんを「ステルス野党だ」などと繰り返し批判し、巻き返しを図ろうとしたが、戦況は変わらなかった。
◆復活で合意したが‥
8月末には、岸田文雄首相(自民党総裁)と公明党の山口那津男代表が次期衆院選に向けて東京での選挙協力を復活させると大筋で合意。これを受けて、選挙戦最終版には公明の一部が支援に動き、巻き返しを図ったものの、支持層全体に浸透するには時間が足りなかった。
清水さんの陣営幹部が、悔しそうにこぼした。「生きるも死ぬも公明次第。まるで、まな板の上の鯉(こい)だった」
敗戦が決まった清水さんは「公明党支持者の皆さんも(票を)入れてくれたと信じている」と言いながらも、落選の結果に「最初から自公で協力し合いながら時間をかけて選挙運動ができればそれにこしたことはなかった」と残念がった。
◆「私の政策は公明との親和性も高い」
一方、酒井さんは257票差で敗れた前回市長選の雪辱を果たした。
酒井さんは4年前の市長選で、当時4期目を目指していた自公推薦の現職市長に挑戦。現職の厚い壁を打ち破るため、立憲民主、国民民主、共産、社民など野党各党の支持を得て、事実上の野党統一候補として選挙に臨んだが、あと一歩及ばなかった。
今回は2月に出馬会見を開くと当初から「政党の推薦、支持は受けない」と表明。現職が引退するとの見方が強まっていた中で、地元での高い知名度を生かし、幅広い層からの支持を集める戦略に切り替えた。
東京で自民と公明の関係が悪化したことも踏まえ、選挙戦では「私の政策は公明との親和性も高い」とまでアピール。陣営幹部は「前回とは戦い方が明らかに違う。より多くの人に政策を聞いてもらえるようになったと思う」と振り返る。
◆都民ファ推薦候補は追い上げ
都民ファーストの会と国民民主の推薦で立候補した元市議の伊藤大輔さんは存在感を見せた。
選挙戦では当初、知名度の高いベテランの元都議2人を相手に劣勢を強いられたが、都民ファーストの会の全面的な支援などを受けて追い上げた。
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