安倍晋三元首相の葬儀を、なぜ「国葬」とするのか。実施を決めた岸田文雄首相は、国民の疑問に真摯(しんし)に答えなければならない。
近く開かれる国会の閉会中審査に首相が出席し、説明する。当初は松野博一官房長官が出席する方向だったが、反対論の広がりや内閣支持率の急落を受けて、方針を転換した。
そもそも、明確な定義や法的根拠、対象者の基準を欠いたまま、政治家の国葬を実施することには問題が多い。本来なら法整備が必要なはずだ。
少なくとも、国会で議論した上で合意を得るという手続きが必要だった。にもかかわらず政府は、国会審議を経ずに閣議決定だけで済ませてしまった。
国葬の実施について首相は「時の政府が総合的に判断するのが、あるべき姿だ」と述べた。だがそれでは、恣意(しい)的な運用につながる恐れがある。
安倍氏の首相在任期間が憲政史上最長だったことや、「歴史に残る業績」が、国葬の理由に挙げられている。しかし、安倍政権の評価は定まっておらず、説得力に乏しい。
それ以上に、国民が疑念を募らせているのは、安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の深い関係が指摘されていることだ。
安倍氏の他界を理由に、「把握に限界がある」と首相は消極的だが、自民党総裁として、実態を解明する責任がある。
国葬にかかる費用も不透明だ。
政府が発表した会場設営費などの約2・5億円は、今年度の予備費から支出される。だが、予備費は災害対応など緊急時のための財源だ。
予算は国会の議決を経て執行するのが、財政民主主義の原則である。国葬についても補正予算を編成し、国会に諮るのが筋だ。
参列のため各国から来日する要人の警備・接遇などを含めれば、費用はさらに膨らむという。政府が全体の概算を事前に示すことが国会での議論の前提となる。
首相は先の記者会見で「初心にかえり、国会で丁寧に説明する」と強調した。しかし、世論が割れる中、肝心なのは説明の中身だ。これまでの発言を繰り返すだけでは、信頼回復はおぼつかない。
からの記事と詳細 ( 社説:「国葬」の閉会中審査 首相は疑念解消できるか - 毎日新聞 )
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