北海道・知床半島沖で起きた乗客ら20人が死亡、6人が行方不明となった観光船沈没事故から23日で1年となった。沈没したカズワンを運航していた「知床遊覧船」の桂田精一社長(59)は先月末、読売新聞の電話取材に応じた。船体の整備不良について、事故3日前のJCI検査の通過を持ち出し、「車でいう車検には合格していたわけだから」と自身の責任を否定。自らを「船素人」「全くの無知」などと語り、船体管理は、事故で亡くなった豊田徳幸船長(当時54歳)に任せきりだったと説明した。
沈没は、甲板から船底部への入り口となるハッチ(約50センチ四方)から海水が流入して起きたとされるが、桂田社長は「あの小さいハッチから水が入っただけで沈むのか、不思議なところがある」などと発言。検査翌日に従業員らが行った救命訓練で「誰かがハッチを開けたままにしていたのではないか」と語った。
事故を調査している運輸安全委員会は、カズワンの船体に複数の問題点があったと指摘。船底部の区画を仕切る隔壁に事故前から穴が開いていたことを、桂田社長は事故後に初めて知ったといい、「それをJCIさんが(検査で)通しちゃった。隔壁がないなんて怖い船だった」と話した。
桂田社長は事故4日後に記者会見を開いて以降、公の場での説明や謝罪をしていない。乗客家族から要望があれば「直接謝罪に行く」と答えた一方、23日の追悼式については「お誘いいただいていない。顔を見たくないという人もいるだろう」と欠席する考えを示した。
海上保安庁は、桂田社長らを業務上過失致死容疑で捜査している。(野田快)
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