沖縄県沖縄市の路上でバイクに乗った高校生が警察官に暴行され失明した事件で、被害者の高校生の代理人弁護士が10日、県庁記者クラブで会見を開きました。弁護士を通じて公表されたコメントの全文を公開します。
弁護士が公表したコメント 2022年11月10日
私たちは、2022年11月1日に、沖縄警察署長から謝罪を受けました。ところが、翌2日に行われた沖縄県警の記者説明会では、私たちの認識と異なることや、謝罪の際には言及されなかった説明もあったようです。私たちは、このような沖縄県警の説明にショックを受けており、この度代理人を通してコメントを出すことにしました。
沖縄県警は、加害警察官が少年に職務質問するために停止を求めたが、少年が止まらずに向かってきたと説明しています。しかし、少年は、加害警察官から停止を求められていません。突然物陰から出てきた加害警察官に、声をかけられることもなく、突然棒のようなもので殴られました。なお、少年は、ヘルメットを着用して、路地を普通に走行していたに過ぎず、そもそも職務質問が必要な状況でもありませんでした。
また、沖縄県警は、加害警察官が右手に警棒を持ちながら左手でバイクや身体に掴みかかり、少年の身体に触れたと説明しています。しかし、少年は、加害警察官に掴みかかられたという認識はありません。
沖縄県警は、加害警察官が少年に職務質問をするため停止を求めたが止まらなかったために少年に掴みかかった、という行為を故意の暴行と認定しています。しかし、上記のとおり、少年は、突然物陰から出てきた加害警察官に殴られたのであり、故意および暴行の内容が全く異なります。
沖縄県警は、少年が走り去ったことについて、「逃走」という言葉を使うなど、あたかも少年が停止を振り切って逃げようとしたかのような説明をしています。しかし、少年は、突然棒のようなもので強打され、止まったら何をされるか分からず危険を感じ、止まることができなかったのです。
私たちは、11月1日の謝罪の際、接触時の状況や故意の内容について質問しましたが、具体的な内容は答えられないと言われました。それにもかかわらず、翌日には記者に対して上記のような詳細を説明しており、しかもその内容は少年の認識とは異なるものです。
加害警察官の説明は二転三転していますが、少年は、被害状況について一貫した説明をしています。それにもかかわらず、沖縄県警の説明は、少年の一貫した主張を認めず、あたかも少年に非があるかのような内容が含まれており、全く納得できません。私たちは、沖縄県警が上記のような認識でいると知っていたならば、謝罪を受けませんでした。また、上記のような沖縄県警の説明であるならば、そのための捜査に9カ月もの期間を要したことも到底納得できません。
以前、沖縄県警は、加害警察官をかばうことや事実の隠蔽(いんぺい)はしないと説明していましたが、少年の証言内容は無視し、加害警察官の言うことのみをうのみにしているとしか考えられません。沖縄県警は、加害警察官が、少年が走り去ったため、当初けがをしたという認識はなかったと弁解していると説明しています。しかし、少年は相当な衝撃を受け、現に右眼球破裂、右頬骨骨折、右眼窩底(がんかてい)骨折、右前頭葉脳挫傷、脳震盪(しんとう)等の重大な傷害を負っており、そのような弁解はおよそ信じ難いものです。私たちは、担当医から、相当な力がかかっている、たまたまで起こるようなけがではないと説明を受けています。
沖縄県警は、少年が119番をして物損事故を伝えたと説明しています。しかし、少年は119番通報の際、けがをしたことも伝えています。
沖縄県警の説明では、加害警察官は、現場に集まった警察官の中で、バイクの少年と接触した者はいないかの確認がされたとき、自分ではないかと上司に報告したとのことです。これが事実ならば、現場に駆け付けた少年の友人らに目撃した者がいないかなど、事情聴取が行われるはずです。
しかし、警察官は、駆け付けた友人に対して大声で「事故!事故!」、「帰れ!」、「どけ!」と言い放ち、友人らを押しのけるなどして強引に現場から解散させました。このような経過から、加害警察官が現場で自己申告したとは考えられませんし、警察が守るべき市民に対する対応とは全く思えません。仮に自己申告があったのであれば、初動捜査の不手際も明らかです。
少年の友人らは、このままでは警察に事件が隠されると考え、SNSを使って事件の内容を拡散しました。このことがなければ、事件自体が隠されてしまっていたのではないかと今でも考えます。もっとも、警察署に物を投げつける暴動にまでなったことは、少年も、少年の友人らも望んだことでは全くありません。
加害警察官には、今からでも、本当のことを話してもらいたいと強く思います。少年の失われた右目が元に戻ることはありません。これから検察官の捜査が始まりますが、少年の言い分をしっかりと聞き、公正かつ適切な対応をして頂きたいと切に願います。
本件については、少年が暴走行為をしていた、ノーヘルだった、無免許だった、盗難車だったなど、全く根拠のない悪質なデマが当初からあふれています。これらについては沖縄県警も事実ではないと認めていますが、ネット記事のコメントなどを見るといまだにそのようなデマを信じている人が多くいるようです。
沖縄県警が、当初から積極的にデマを訂正する発表をすべきだったと思いますし、今回の説明会でもこのデマの部分はわずかに触れる程度になっており、被害者である少年を警察として守ろうという気持ちも感じられません。この点でも沖縄県警の対応は残念でなりません。
最後に、マスコミの方へのお願いです。私たちは、私たちに寄り添う報道には心から感謝しています。その一方で、ネット上等において少年に対する誹謗(ひぼう)中傷がやまず、苦しめられている事実がありますので、少年のプライバシーに配慮し、個人を特定し得るような情報は流さないようお願い致します。
高校生母親のコメント
息子は、明るい性格で、周囲を楽しませ、弱い人、動物にも優しく、母親思いでこれまで2人で寄り添い生きてきました。私の大切な息子のことを理不尽な理由で傷つけていい人は絶対にいません。
視力がなくなるだけではなく、眼球までつぶされてしまい、息子の目はもう元の状態に戻ることはありません、このような悲劇にあった17歳の息子相手に、警察官は自分の保身ばかりをしているようにみえます。
ご存じの通り、今回接触時の防犯カメラ映像、目撃情報はありません。
息子の話は一貫していて本当のことを言っています。何度も証言内容の変わる人間とどちらがうそつきでしょうか。
警察官がそんな事するはずがない、という先入観から、息子の言う事を信じてもらえないのだと思います。
今後の捜査では、そのような先入観に縛られることなく、息子の言っていることに誠実に目を向けて欲しいと切に願います。
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