ある曇った冬の日暮れ、横須賀発の列車に乗り込んだ私は、疲労感と倦怠感でいっぱいだった。そのとき着物も肌も髪もすべてがみすぼらしく、いかにも田舎者らしい十三四の年頃の娘が乗り込んできて、私の目の前の座席に座った。正直、私は不快に思った。
気にせずひと眠りしようとしたが、いきなりその田舎娘が私の隣に座り、一生懸命に窓を開けようとしている。しかも列車がトンネルに差し掛かろうとしている時に・・・。
そして、ついに列車がトンネルに突入した途端窓が開き、煤を溶かしたようなどす黒い空気が車内に入ってきてしまった。
娘の行動はますます私をイラつかせたのだが、
踏切に差し掛かった時、なぜこの娘がそのような行動をとっていたのかがわかる出来事が私の目の前で起きた。
結果、この娘に対して抱いていた不快感は一瞬で消え去り、むしろ朗らかな気持ちがわいてくるのであった。
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