独自の内密出産制度を導入する熊本市西区の慈恵病院で、未成年の女性が匿名のまま出産した。家族ら周囲に頼ることができず「1人で産んで捨てるしかない」と追い込まれかけた女性。4日に記者会見した蓮田健院長は「危険な孤立出産を防ぐためにも、内密出産は続ける」と改めて強調した。会見の一問一答は以下の通り。 (西村百合恵、鶴善行) 【図解】慈恵病院の内密出産とは
-女性が訪れた経緯は
「昨年11月中旬にメールで相談があった。その後もメールや電話でやりとりし、12月に熊本に来る日が決まった。その日の午前中に出血が始まったと連絡があり、私と新生児相談室長が新幹線で(JR)博多駅まで迎えに行き、午後に病院に到着。翌日、無事に出産した」
-出産後の母子の様子は
「女性は出産直後に赤ちゃんを抱っこした。しかし出生後の血液検査で異常値が出たため、保育器で抗生物質と点滴を始めることになった。なかなか抱っこもできない中で、女性は毎日面会に来ていた。退院日に赤ちゃんを抱き上げた際には、号泣していたようだ」 「病院で助産師や相談員に会い『大人にこんなに優しくしてもらったことはなかった』と言っていた。当然の対応をしただけだが、そう言わせる環境が女性の周りにはあった。自己責任という意見もあると思うが、女性が育った環境も理解してほしい」
-女性が身元を明かせない理由は
「パートナーの男性から暴力を受ける可能性があること。出産が知られると母親から縁を切られること。母からの虐待歴があり親子関係は悪いが、それでも母から離れたくないと言っている」
-女性の身元情報はどのように保管するのか
「健康保険証と高校時の学生証のコピーを、彼女が持参した封筒に入れた。相談室長だけが中身を確認し、病院で厳重に保管する」
-子どもへ情報開示はいつ行うのか
「『赤ちゃんが知りたいと言ったときにいつでも開示して良い』と女性から言われた。開示の際は女性に連絡を取り確認をする必要がある」
-今後も内密出産は続けていく
「彼女は『病院で出産できなければ1人で産んで捨てていたかもしれない』と言った。危険な孤立出産を防ぐためにも内密出産を継続していく。また、年間約20件発生している赤ちゃんの遺棄・殺人を防ぐために、市や国には現実的な対応をお願いしたい」
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