
コロナ禍で無観客開催となった東京五輪が8日、閉幕する。海外からの訪日客が制限され、メインスタジアム「国立競技場」の目と鼻の先にある老舗ラーメン店「ホープ軒」(渋谷区)でも期待していた程の“五輪効果”は得られなかった。それでも同店の代表・牛久保英昭さん(82)は、アスリートの活躍に勇気づけられたといい「滅私奉公してもいい大会にしたい」と厨房(ちゅうぼう)に立ち続けている。(奥津 友希乃)
約半世紀ぶりに東京でスポーツの祭典が開幕した7月23日、「国立に一番近い店」は夜まで客足が途絶えない盛況ぶりだった。
牛久保さんは「開会式前日からの4連休は、(航空自衛隊)ブルーインパルスの飛行や国立競技場の写真を撮りに来た人たちがたくさん店にも来てくれて、ずいぶん忙しかった」と振り返る。4連休は売り上げ目標の“1日1000杯”に達する日もあったが、その後は「遠く及ばない日が続いている。もっと忙しい夏になるはずだったのに」と肩を落とす。
牛久保さんは、1960年に都内でラーメン屋台を引き始め、75年に旧国立競技場を目の前に望む東京・千駄ケ谷の地に店を構えた。創業から続く背脂多めのとんこつしょうゆラーメンは、タクシー運転手らを中心に人気を集め、数多くの常連客を抱える。
現在は「千駄ケ谷大通り商店街振興組合」の理事長も務める“地元の顔”として、大会を誰よりも心待ちにしてきた。訪日客に対応できるよう日本語と英語に対応した食券機の他に、常連客による“お手製”の中国、韓国、オランダ、スペイン語表記のメニューを店内に掲示。「自分にとっては2回目の東京五輪。街をあげて応援したいという気持ちがあった」と“おもてなし”の準備は整っていた。
新型コロナウイルス感染拡大による思わぬ無観客開催の決定には「正直がっかりはしたよね」と本音を漏らす。大会期間中、競技会場周辺は高さ約3メートルのフェンスに覆われ、店前の外苑西通りは車両進入禁止エリアに。常連客や当初期待していた海外からの来客も見込めていないが、「それでもできることは協力したいし、選手のために滅私奉公してもいい大会にしたい!」と力を込める。
最近では、来日後の隔離期間を終えた海外記者の来店も増え始め「2階のテーブル席で競技場を見ながら食べる一杯は格別」との声も聞かれる。従業員らと共に店に立ち続ける牛久保さんだが、代表選手らの奮闘に「自分も一生懸命やらなきゃという気持ちになる」と背中を押されている。コロナ禍でも24時間営業を続ける店は、地元の“希望”として、きょうも伝統の味で客の心を満たしている。
◆ホープ軒 牛久保さんが60年に屋台を始め、高田馬場や内幸町などで営業。75年に千駄ケ谷で店舗営業を開始。漫画家・横山泰三さんが描いた豚のロゴマークが目印で、1階はタクシー運転手が素早く食べられるように立食形式となっている。中野に支店「環七丸山店」がある。弟子から多くの人気店が生まれた。ラーメンチェーン「野方ホープ」は全くの別会社。人気メニューはラーメン800円。年中無休で24時間営業。
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