富士通は2020年9月29日、車載ソフトウェア開発に関わる各種設計データの収集、統合用ソリューション「Future Mobility Accelerator Design Collaborator」を同年10月1日から販売開始すると発表した。各設計部門間での設計データ参照を容易にすることで、車載ソフトウェア開発を効率化するという。
富士通は2020年9月29日、車載ソフトウェア開発に関わる各種設計データの収集、統合を行うソリューション「Future Mobility Accelerator Design Collaborator」(以下、Design Collaborator)を、同年10月1日から販売開始すると発表した。各設計部門間での設計データ参照を容易にすることで、車載ソフトウェア開発を効率化する。販売価格は税別で月額55万円から。
ソフトウェア設計変更時の影響分析などを効率化
近年、自動車業界ではADAS(先進運転支援システム)などを使った自動車の知能化や高度化を進める研究開発が加速している。こうした動向を背景に、自動車開発ではソフトウェア開発の重要性が以前より高まりつつあるのだが、ソフトウェア開発の迅速な実施を妨げる要因も存在していた。それが、設計部門の細分化である。
現在の車載ソフトウェアは、ハードウェアや他のソフトウェアと相互連携することで多様な機能やサービスを自動車上で実現している。このため、ソフトウェアの設計に一度変更を加えると、その影響はハードウェアやソフトウェア、通信などの設計にまで波及する。この影響度を正確に把握しなければならないのだが、部門が分かれているとこうした作業を速やかに進めることが難しい。
この課題を解決するべく開発されたのが、各設計部門に散らばったソフトウェア設計情報やハードウェア、通信設計の情報を一元的にデジタル管理するDesign Collaboratorだ。各ソフトウェア設計部門の設計情報やハードウェア部品の構成情報を、AUTOSARやReqIFなどのフォーマット形式で収集する。収集した設計情報は、車種、型式、部品、ECU(電子制御ユニット)といった軸で構造的に整理、管理される。
これにより、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ管理による開発期間の短縮やコストの低減、開発プロセスの上流で異なる部門が協調した品質の作り込み、設計変更時の影響分析業務の省力化に貢献する。
各設計部門の設計情報を一元的に管理することで、特定の部門が保有する設計情報と他設計部門の設計情報間にある関連性を可視化できるようになる。ECU間におけるデータの送受信を設計段階で参照し、部門間の設計に不整合が見つかればアラートが表示される。開発プロセスの上流の設計段階から部門間のコミュニケーションを促すことにより、協調した品質の作り込みを可能にする。
ソフトウェアの設計変更を行う場合には、設計担当者が変更対象のソフトウェアを起点に、他のハードウェアやソフトウェアの影響度合いを分析しやすくする仕組みを整えた。具体的には、管理対象の設計データを「要件」「ハードウェア」「ソフトウェア」「通信インタフェース」の大きく4つに分類、管理することで、それらの分野の設計データを参照しやすくする。従来、影響分析の業務は1カ月程度かかることもあったが、これを効率化できるという。
また、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ情報を可視化することで、特定の組み合わせと類似した組み合わせを発見する機能もある。自動車製品を海外輸出する場合は、販売先の国や地域に合わせた規制対応が求められる他、オプションとして提供するハードウェアやソフトウェアが多くなりがちだ。これによって、同じ車種でも多数のバリエーションが生まれる場合がある。ハードウェアとソフトウェアの複雑な組み合わせ情報も一元的に管理することで、削減可能なバリエーションを特定する他、テスト工程で検証が必要な組み合わせパターンを抽出できるため、開発期間短縮や開発コスト低減につながるという。
Design Collaboratorの売り上げ目標として、富士通は2023年度末までに20億円を達成するとしている。
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