マイクロソフトの「Xbox Series X」と、ソニーの「プレイステーション 5(PlayStation 5、PS5)」が、それぞれ年内に発売される。いずれもハードウェアの進化という点では申し分ないものだ。
しかし、わたしたちはいま、過去に例がないほどメディアが大量消費される時代を迎えている。iPhoneでNetflixを楽しみ、タブレット端末でKindleの電子書籍を読み、PCではSpotifyで音楽を聴くといった具合で使い分けできるし、その組み合わせも自由自在だ。
そしてヴィデオゲームも同じ道をたどっている。こうしてスペックを強化した家庭用ゲーム機の重要性が、ますます疑問視されるようになってきた。結局のところ「フォートナイト」をプレイしている子どもたちは、どんな端末でもゲーム機として使えることを知っているのだ。
こうした考えは、Xboxが推進しているヴィジョンでもある。しかし、家庭用ゲーム機の新時代が幕を開け、わたしたちがリヴィングルームに設置するこれらの高性能なマシンは、10年後には存在しているかどうかすら怪しくなってきた。
Xbox Series Xを強力に推し進めているマイクロソフトも、いまから10年後にはより多くのゲーマーが場所や端末にしばられずにプレイするようになると考え、リスクを分散させている。Xboxの責任者であるフィル・スペンサーは、「10年後に家庭用ゲーム機が存在するか」という問いが見当違いであると考えているのだ。
「わたしにとって長い目で見れば、これはテレビの存続可能性にかかわる問いなのです」と、スペンサーは『WIRED』US版のインタヴューで語っている。「微積分のように複雑なチェスの試合をしているようなものです」と彼は言う。「もはや(ボードゲームの)チェッカーではないのです」
マイクロソフトの真の“対局相手”
この複雑なチェスの相手は、ソニーでも任天堂でもない。世界中の20億人のゲーマーによるメディアの消費方法は絶えず変化しているが、その変わりゆくトレンドこそが対局の相手なのだ。
Xbox Series Xは年内に発売され、場所を問わずゲームで遊べるクラウドゲーミングサーヴィス「Project xCloud」や「Xbox Play Anywhere」と一体化されていく。xCloudの利用料は未定だが、メジャータイトルをスマートフォンやタブレット端末にストリーミングして遊べるようになる。Xbox Play Anywhereを利用すれば、購入した「Forza Horizon 4」をXbox OneでもWindows 10のPCでもプレイできる。
「プレイヤーのライフスタイルに合ったデヴァイスや、プレイヤー自身にフォーカスしていく予定です」とスペンサーは語る。
Xbox Series Xが発売されれば、マイクロソフトにとって最も高性能なゲーム機になる。スペック重視の人たちにとっては、Xbox Oneの4倍の性能をもつカスタムプロセッサーを搭載している点は朗報だろう。最大120fpsまでのフレームレートに対応し、GPUの性能は12TFLOPS(テラフロップス)にも達する。
テラフロップスの話に興味がない人にとっても、ゲームを中断したところから瞬時に再開できる「クイックレジューム」機能は便利だろう。後方互換性をもつ旧作タイトルも豊富に用意される。そして本体の価格は未定だ(ちなみに「Xbox 360」の発売価格は400ドル、Xbox Oneは500ドルだった)。
新しいXboxを購入すれば、ユーザーは使いやすいユーザーインターフェースや満足度の高い体験を提供する各種機能によって、ハイエンドなゲームをストレスなくプレイできる。だが、それも数年後に「Series Y」のような新機種が投入発売されることになれば、陳腐化してしまうかもしれない。
壁に囲まれた“箱庭”という遺物
Xboxは長年にわたり、ゲームの遊び方をかたちづくる伝統的な境界線に徐々にメスを入れてきた。というのも、マイクロソフトは早くから「クロスプレイ機能」を導入していたのだ。
この機能では、異なる機種同士のプレイヤーが一緒にオンラインで対戦できる。「マインクラフト」や「ロケットリーグ」などがこれに対応していたが、ソニーのタイトルは対応していない場合が多かった。
ちなみにソニーは2017年、フォートナイトにおいてプレイステーション4とXbox Oneのクロスプレイ機能を誤って有効にしたことがあった。その際にスペンサーは、次のようにツイートしている。「わたしがプレイヤーなら、有効なままにしておいてほしかったと思います」
プレイステーションのユーザーは壁に囲まれた“箱庭”の中で、プレイステーション専用のゲームで遊ばなければならなかった。そしてXboxのユーザーなら、その隣にある別の箱庭で過ごさねばならなかった。
「別々のハードウェアを買うと一緒にプレイできなくなるというのは、いまや過去の話なんです」とスペンサーは指摘した上で、こうした壁に囲まれた箱庭のことを「1990年代の遺物」と揶揄する。とはいえ異論もあるだろうが、ほかにもXboxにはなくすべき境界線がある。多くのゲーマーは、ソニーのほうが魅力的な独占タイトルが揃っているように感じているだろう。
ゲームに対する価値観の変化
マイクロソフトが数年前、Xboxの自社タイトルをPCと家庭用ゲーム機で同時発売する決定をしたときのことだ。スペンサーは「昔ながらの家庭用ゲーム機派」から反発を受けたという。スペンサーによると、こうした人々の価値観は次のようなものだ。
「家庭用ゲーム機は5年ごとに発売される。新機種が発売されたら、旧モデル機はゲームと一緒にダンボールに入れ、押入れにしまわなければならない。そして新機種に対応するゲームをすべて買い直す。これこそ家庭用ゲーム機のあるべき姿だ」
いま、ゲームをプレイする最も一般的な手段は家庭用ゲーム機ではない。スマートフォンだ。モバイルゲーマーのイメージも年を追うごとに大きく変化しており、「キャンディークラッシュ」で遊ぶ主婦から、「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(PUBG)」で対戦相手をヘッドショットする熱心なティーンエイジャーまで、さまざまな姿が見られるようになった。
Xboxがアフリカやインドなどの市場に進出していくなか、主にスマートフォンやタブレット端末でエンタテインメントを楽しむ人たちはテレビやゲーム機を買ってコンセントにつなぐことはないだろうと、スペンサーは考えている。これらの人々は、すでに所有しているハードウェアで「Sea of Thieves」を遊びたいと思うことだろう。
デヴァイスを問わない体験をゲームにも
それは完璧な体験ではないかもしれない。5Gが普及するまでは、クラウドゲーミングは通信速度や遅延の問題に悩まされることになるだろうからだ。しかし、映画やテレビ、音楽などのコンテンツは、ますますデヴァイスを問わず楽しめるようになってきている。ゲームもそうするべきではないだろうか?
「あなたとわたしが、それぞれNetflixを使っているとしましょう。お互いどの端末を使っていようが、観ている番組についてふたりで話せますよね」と、スペンサーは言う。「ゲームもそれと同じレヴェルに進化してほしいんです」
そしてもちろん、マイクロソフトがWindowsで大きなシェアを占めるPCの存在も忘れてはならない。安価なゲーミングPCは、Xboxより少し高い価格で購入できる。ゲーミングPCならXboxで未発売のタイトルも含め、非常に多くのゲームをプレイできるのだ。
Xboxのコントローラーを使い慣れていれば、そのままPCのUSBポートに差し込むだけで、すぐに使えるようになる。月額5ドルで何十タイトルものゲームが遊び放題な「Game Pass」がXboxで人気を博しているが、こちらもPCで利用可能だ。
安価なPCではXbox Series Xのパフォーマンスには遠く及ばないだろうし、当然のことながらブランド力にも大きな差がある。それなら、XboxをリヴィングルームのPCと位置づければいいのではないだろうか?
「一部の人にとっては、すでにそうなっていますよね」と、スペンサーは言う。「キーボードやマウスを使ったり、メールを作成したりはしませんが、家庭用ゲーム機の使い方はPCと似てきています」
スペンサーによると、PCと比較した場合、Xboxに必要なのは「テレビに最適なユーザーインターフェイスと入力手段」であるという。
これからも続く「テレビの時代」のために
スペンサーは、Xbox Series Xと「端末を問わずにプレイできる」という謳い文句を、“共食い”であるとは考えていない。あくまで補完的な手段とみているのだ。
「『ハードウェアへの非依存性』は、『どこでも遊べる自由度』ほど実現されていないと思います」と、スペンサーは指摘する。もっともな話だ。プレイする方法が増え、マイクロソフトが提供するサーヴィスが増えれば、同社に繰り返し入ってくる収入は増える。
Xbox Series Xをめぐる過剰なまでの期待がひと段落し、コンテンツをハードウェアに依存させる手法が限界を迎えれば、Xboxのゲームで遊びたい人の多くがさまざまなハードウェアでプレイするようになることもありうる。
そうなれば、家庭用ゲーム機は次世代で最後になるのだろうか。そうした疑問がわくのも当然だろう。
「わたしはテレビを観たり、テレビでゲームをしたりすることが大好きなんです。そうやって休みのほとんどを過ごしています」と、スペンサーは言う。「これからも長きにわたり、人々がテレビで“遊ぶ”時代は続くでしょうね。わたしたちはその事業に力を注ぐことで、素晴らしいゲーム機による体験をお届けします。Xbox series Xがわたしたちにとって最後の家庭用ゲーム機になるとは思いません。今後も家庭用ゲーム機の事業を続け、テレビで楽しく遊べる時間を提供し続けることになると思います」
そうでなくとも、マイクロソフトには別の選択肢がある。「マイクロソフトほどの規模をもつ会社のメリットとして、さまざまな方面にリスクを分散させることができます。わたしたちは実際、成功のために特定の事業や関係に依存することはないのです」と、スペンサーは言う。
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