ASUSがゲーミングノートPCの新モデル「ROG Zephyrus Duo 15」を発表した。その名の通りデュアルスクリーンを搭載したこのノートPC。キーボード部分の半分を占めるサブ画面の存在感ゆえに、実際に試してみると、かなり微妙な使い勝手になっている。
TEXT BY JESS GREY
ASUSの「ROG Zephyrus Duo 15」は、過ぎ去った時代のためにつくられたゲーミングノートPCである。その時代は、もしかすると最初から存在していなかったのかもしれない。
とはいえ、この新しくも混沌とした時代において、ゲーミングノートPCに意義がないと言いたいわけではない。それでもこれほど派手なつくりだと、どこか過ぎ去った時代の遺物に思えてならないのだ。
「Duo」という名の通り、このノートPCはデュアルスクリーンを搭載している。だが、まさにそこが「なぜ必要なのか」と疑問に思わせる部分なのだ。
アップルの「MacBook Pro」のタッチバーが、キーボード並みのサイズに大型化したものを想像してほしい。Zephyrus Duo 15のサブディスプレイは、ノートPCのキーボード部分の半分を占める。
その点を除けば、「Duo」ではないZephyrus 15で使われているようになROG Zephyrusの標準的な筐体と基本的には変わらない。寸法、画面、ハードウェア、どれも共通になっている。つまり、高性能で素晴らしいゲーミングノートPCなのだ。それでは、サブディスプレイは何のために必要なのだろうか? 必要ないのである。
悪いアイデアではないが……
ASUSは以前もデュアルスクリーンのノートPCを発売している。デュアルスクリーンは理論上、コンテンツクリエイターたちにとって悪いアイデアではない。
「Adobe Photoshop」や「Adobe Premiere」で作業していると、ノートPCの画面は窮屈に感じることがある。クリエイティヴな仕事をする人の多くが、MacBook Proをフルサイズのデスクトップモニターに接続するのはこのためである。
大量のウィンドウの切り替えが必要な場面では、広大な画面領域が役に立つ。これと同様に、Zephyrus Duoのようなサブディスプレイも、ヴィデオゲームのライヴストリーミングなど、集中的な作業を行う際には役に立つことがある。
そこが問題なのだ。しかも問題点はひとつではない。
まず、デザインの観点から失敗したアップルのタッチバーと同じ轍を踏んでいる点だ。キーボードの高さにある妙なサイズのサブ画面を見るために、メイン画面から目線を落とす必要があるのは操作として直感的ではない。タブレット端末でタイプするような感覚である。常に目線を下げなければならず、ぎこちなくて使いづらい。
サブ画面は傾けることができる。だが、むしろ回転させてメイン画面の隣に配置して使いたいと感じた。2台のディスプレイは上下に並べるより、横に並べたほうが直感的だと感じる。
ストリーミング配信に向く?
ふたつの画面をもつこのマシンは、ゲームをストリーミング配信することが目的であると謳われている。だが、ノートPCでストリーミングするのはハードルが高い。
詳しくない人のために説明すると、ゲームをTwitchやYouTubeなどのサーヴィスでストリーミング配信するには、ゲームやウェブカメラ(ほかにもストリーミング用に別のマイクを使うことも多い)を動作させ、ウェブカメラやマイクからの入力とゲームプレイの両方を配信する必要がある。
このためプロのストリーマーは2台のコンピューターを使うことが珍しくない。十分な性能があれば、1台のゲーミングPCで配信することもできる(通常はフルサイズのサブモニターも必要になる)。
技術的にはノートPCからでもゲームをストリーミングすることは可能だが、決して理想的な方法とは言えない。Zephyrus Duoも、その定式に当てはまる。サブ画面とハイエンドなハードウェアがノートPCからのストリーミング体験を向上させているが、それにしても一日分の仕事をスマートフォンでやらされているような感が否めない。できないことはないが、窮屈で狭苦しく感じるのだ。
いくつもの微妙なUI
7月に発売予定のZephyrus Duoは、ほかにも変わった設計を取り入れており、困惑させられる。サブ画面の解像度は4Kと、メイン画面の1080pより高解像度になっている。このためサブ画面を最大の解像度にすると、ユーザーエクスペリエンスがぎこちなく感じる。
Windowsはディスプレイ2台の解像度が一致していない場合の処理に問題があり、ディスプレイの物理的な位置関係をうまく扱うこができない。このため両方とも1080pに設定しないと、片方の画面からもう片方の画面に何かを移動させる際、操作がしづらくなるのだ。
Zephyrus Duoの筐体は耐久性、美観、冷却性能に優れているが、個人的にはキーボードのレイアウトに問題を感じる。サブ画面のスペースをつくるためにキーボードは筐体の一番手前まで押しやられ、トラックパッドはテンキーがあるべき場所に移動させられている。この排他的なデザインのせいで、左利きの人がZephyrus Duoを使うのは、ほぼ不可能に近い。
当然だが、このようなキーボードの配置は、タイプ感を不快なものにする。Zephyrus Duoをひざの上に置く場合、安定してタイピングするには脇を閉めなければならない。妙な使い勝手だ。左のシフトキーは二分割され、片方がスラッシュキーになっている。大文字を打とうとして、誤ってスラッシュを入力してしまう問題が多発するだろう。
挑戦は称賛に値する
ゲームプレイに関してはどうだろうか? 問題ない。まったく問題ない。テストした機種は3,500ドル(約37万円)の最上級モデルで、ハイエンド仕様になっている。グラフィックカードはNVIDIAの「GeForce RTX 2070」、プロセッサーはIntel Core i7、そして16GBのRAMを搭載している。
印象的な外観で、ゲーミング性能は全面的に優秀だ。ただし、キーボードの配置のせいで、外付けキーボードを接続しない状態では操作性が悪かった。トラックパッドが小さすぎるので、マウスも必要になるだろう。
ノートPCという成熟したフォームファクターで新しいことを試みたという点では、称賛に値する。しかし、それがZephyrus Duoの成功に結びつくことはなかった。まるで90年代のコンセプトカーのように、時代錯誤の感が強い。
デザインと性能は申し分ない。だが、いずれにせよこの派手なマシンが、普段使いのコンピューターを置き換えることは決してないだろう。
※『WIRED』によるゲーム関連の記事はこちら。
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May 07, 2020 at 03:00PM
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