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Sunday, February 16, 2020

レイトレ×ゲームエンジンで働き方改革! サードウェーブが仕掛ける新サービス「Offima」とは - ITmedia

 サードウェーブグループは、PCショップ「ドスパラ」や「上海問屋」の全国展開、さらにeスポーツの支援などを積極的に行っていることで知られている。

 グループの一角を占めるサードウェーブソリューションズが開発した「Offima」(オフィマ)は、オフィスなど部屋の間取りのレイアウトを3D/VRで再現できるツールだ。

 リアルタイムレイトレーシングを活用し、リアリティーの高いグラフィックスやCAD図面の出力、椅子や机などの衝突判定まで行える正確さを兼ね備えており、オフィス家具や内装工事業界の業務を一変させるポテンシャルを持つと期待されている。

 ゲーミングPCブランド「GALLERIA」といったハードウェアやゲームのイメージが強いサードウェーブグループが、なぜオフィス家具/内装工事向けのソフトウェアを開発したのか、どのような活用が考えられるのか。気になる開発背景や将来の展望などをサードウェーブソリューションズの担当者に伺った。

offima サードウェーブソリューションズが手がける「Offima」

測ったのに洗濯機が入らない!? トラブルから始まったその開発

――サードウェーブグループというと、ハードウェア販売やゲームのイメージが強いのですが?

江幡氏 実はOffimaの開発もゲームとは密接な関係があります。2017年から、我々はUnreal Engineの技術者教育事業をしていたんですね。Unreal Engineは高いハードウェア性能が要求されるのですが、とてもきれいなリアルタイム映像が作れますし、サードウェーブグループのPC事業とも相性が良いということで、可能性を感じていました。

 ただ、当時は専門学校もなく、講師もいない、(一般の学校では)ハイスペックPCを用意するのも大変ということで、ならば我々で始めたらどうかと手がけました。ただ、事業としてはうまくいっていませんでした。

offima Offima事業を統括するサードウェーブソリューションズ XR部の江幡泰輔部長。製品開発の経緯やコンセプトなどをお話しいただいた

――そこから、どうしてオフィス家具や内装工事に?

江幡氏 開発のきっかけは、当社の室谷が自宅で購入した洗濯機なんですよ(笑)。購入前にきちんと寸法は測ったというのですが、部屋の搬入経路に通れないところがあって、洗濯機が設置できなかったというんです。

 そこで、現実の部屋の形状や設置する製品の大きさを反映したものを作って、衝突判定ができるものがあったら、こういうことがなくなって、役に立つんじゃないかって。さらにUnreal Engineを使えば、よりリアルにできるだろうと考えました。

――教育事業で見ていた技術と、それを生かす方法のイメージがつながったわけですね

江幡氏 前職は建設業界に対してのIT営業をしていた関係で、家具屋さんや内装工事屋さんとお取引をさせていただいていました。そこで、教育部隊でOffimaの簡単なプロトタイプを作ってもらって、以前の取引先さんに見てもらって相談したら「いけるんじゃない?」と。かなり良い反応をもらいまして、ならば進めてみようということになりました。

offima サードウェーブソリューションズ XR部 室谷将之課長。Offimaの機能やその具体的なメリットなど丁寧に教えていただいた。購入した洗濯機が入らなかった経験がOffimaのきっかけになったという

リアルタイムレイトレーシングで光の反射を再現

――Offimaにはどんな機能があるのでしょうか?

室谷氏 3Dでオフィスの間取りを再現できて、床や壁の色、素材を変えることができます。Offima CADというソフトも付属しており、そこで書いたCADの間取り図面をOffimaに取り込んで3D化、Offimaでレイアウトしたものを図面へ返すといった連携もできます。

 その他にも、レイアウトした空間をVR観覧鑑賞で確認したり、パース図出力や配置した家具類の見積もり出力をしたりといったことまで可能です。

offima パース図をリアルタイムで作成できるのがOffimaの特徴の1つ

――その中でも、特筆できる機能としてはどんなものがありますか?

江幡氏 光の反射の再現ができるというのが、一番大きいのではないかと思います。内装工事屋さんに伺いますと、追加工事で一番多いのが照明関係で、季節や陽光の角度、壁や床の色によって変わってきたりもしますし、照度計と人間の感じ方のギャップというのもあるようです。実際、我々のオフィスでも後になって「暗い」ということでスポットライトを足している会議室がいくつかあります。

――光の反射というのはいわゆるレイトレーシングですよね

室谷氏 そうです。本来、こうした光の反射を反映したグラフィックスのレンダリングには非常に時間がかかり、ちょっと配置を変えただけでまたやり直して2〜3時間と待つといったことになってしまうのですが、Unreal Engineと当社が用意したハイスペックPCの組み合わせにより、ほぼリアルタイムでできるというのもポイントです。

――照明だけでなく日照のシミュレートもできるのですか?

室谷氏 もちろんです。朝晩の違いだけでなく、季節の違いによる太陽の高さの違いなどにも対応しています。地形データを入れることで、高層ビルなど回りの建物による採光への影響も調査することが可能です。

offima リアルな表現が可能なUnreal Engineを使うことで、より現実に近いイメージ図を表現可能だ

――競合で同様の機能をもったソフトは、これまでにありますか?

室谷氏 大きなくくりで見るといくつかありますが、我々のリサーチした範囲内では、リアルなグラフィックスなものは図面的な部分が弱く、図面的にしっかりしたものはグラフィックスが弱いといったような印象を受けました。ですので、我々はその両立を目指しました。リアルタイムレイトレーシングによる光の再現もそうですが、イメージしやすいよう、質感などの表現もこだわっているところです。

――家具についてはどうでしょう?

江幡氏 オフィス家具大手のオカムラさんにご協力いただきまして、標準でデータを登録させていただいています。オカムラさんの商品でしたら正確な寸法とリアルなグラフィックスで衝突判定などをシミュレーションでき、見積もりも実際の金額で出せます。他にも、GALLERIAシリーズのPCなども標準で登録しています。アイテムの金額はカスタムできますので、標準価格がない商品でも任意に指定した金額でサッと計算できます。

offima 実際に導入しないと分かりづらい、アイテム同士の衝突判定も細かくシミュレーションできる
offima パース図のデータから詳細な見積もりデータも一発で作成してくれる

――標準で登録されていない製品はどうなのでしょうか?

室谷氏 登録されていないアイテムでも、こちらで作成してOffimaで使うことができます。その場合、BIMや3D DXF、FBXなどのデータと、色合いや質感などを再現するためにカタログをご提供していただいています。もしBIMなどのデータがない場合でも、アイテムの写真を6方向から撮影していただければデータの作成が可能です。

内装工事の手間や時間を大幅に削減

――先ほど、オフィス家具の営業さんや内装工事屋さんというお話が出ましたが、具体的にはどんな業務に役に立ちますか?

江幡氏 内装工事屋さんでいえば、例えばトレーニングジムのお客さまが挙げられます。トレーニング器具自体がかなり大きいので、しっかりとしたシミュレーションが必要ですし、色や採光にもこだわりのある方が多いようです。

――確かに、見た目にこだわったジムを良く見かけますね。

江幡氏 内装工事の業務内容の1つに、パース図(完成イメージ)の提供がありますが、1枚作るのに最低でも2万円くらいかかるようなんです。設置するアイテムの角度違いなどで何通りか作りますし、変更があると出し直さなければならず、コスト面のお悩みが大きいようです。我々のOffimaの場合は、印刷コストのみで何枚でも何度でもパース図を出力できます。

offima パース図から図面を起こすのも瞬時に行える

――大きなコストダウンになりますね

室谷氏 内装工事の場合、このパース図の精度や提案のスピードが契約の決め手になることも多いらしいのですが、それだけにお悩みは大きいようです。お客さまから何度も提出を求められてしまい、お金と時間がかかるためちゅうちょしている間に他で決まってしまったなどといったことがあるようです。これだけでもかなりのメリットではないかと思います。Unreal Engineを使っていますので、カメラ位置も自由に変えられますし、納得いただけるまで検討していただけます。

――時間の短縮や大幅なコストダウンだけでない大きな成果につながりそうですね

江幡氏 はい、オフィス家具屋の営業さんからの感触も良いですね。衝突判定ができるので、肘かけがぶつかってしまう、椅子は置けるけれど机の引き出しが開けられなくなるといったようなトラブルを減らせます。ノートPCを持って営業していただければ、お客さまのお手元でアイテムやレイアウトを変更して、すぐに内容を提示できます。

――営業さんでも簡単に使えるのでしょうか?

室谷氏 アイテムやレイアウトの変更をするだけならば、営業さんお一人でできます。初期教育プログラムも用意していますが、ソフト自体の使い勝手、操作性の部分もこだわったところです。

 習熟が必要な本格的な設計ソフトですと、営業さんはデータを触らせてもらえないというところも多いようです。Offimaなら、アイテムやレイアウトの変更があった場合に設計さんに伝えて変更してもらってまた確認に……といったやりとりや、営業さんに設計さんが同行してもらうといった手間を減らせます。

offima Quadro RTX 8000を搭載したデスクトップPC「THIRDWAVE Pro」と、パワフルなノートPC「GALLERIA」を手に話す江幡氏。建設業界での営業経験などを生かし、Offimaで新たなチャレンジを仕掛ける

48GBのメモリを備えたQuadro RTX 8000搭載THIRDWAVE Pro

――ハイスペックなハードウェアが必要というお話でしたが、具体的などのような環境なんでしょうか?

荻氏 Unreal Engine、リアルタイムレイトレーシングを使用して実現していますので、ハードウェアには条件が付きます。長年ハードウェアを扱ってきた我々の強みを生かし、Offimaの機能をフルに活用していただくために、ハードウェアとセットでのご提供を考えています。デスクトップ型のワークステーション「THIRDWAVE Pro」がベースになりますが、営業用に持ち歩くための「GALLERIAゲーミングノートPC」もご用意しました。

offima サードウェーブ 法人営業統括本部 販売推進本部 販売推進部 法人製品企画課 シニアスペシャリストの荻健太郎氏。Offimaとセットで提供されるハードウェアについて解説していただいた

――Quadro RTX 8000、48GBのグラフィックスメモリ……! さすがにすごいスペックですね

荻氏 このグラフィックスカード単体で80万円程度もする高価なハードウェアですが、信頼性やパフォーマンスは抜群です。オフィスをUnreal Engine、リアルタイムレイトレーシングによるリアリティーの高いグラフィックスで再現し、正確な図面も扱えるOffima/Offima CADのメリットを存分に発揮していただくためにはこれが必要です。

offima Offimaの利用に最適化したPCの構成

オフィスの温度差問題も解決!? 産学連携で風向シミュレーションも

――近い将来の展開について教えてください

江幡氏 随時アップデートを続けて、よりよいものにしていきたいですね。大きな機能としては、風向のシミュレーションを現在、会津大学OpenAppLabさんと産学連携で進めております。これがうまくいけばということになりますが、エアコンの位置やオフィスの仕切りなどによって、オフィス内でも席の場所によって温度が大きく変わってしまうといったようなお悩みを解決できると期待しています。

 また、お客様からのご意見ご要望についても取り入れて改善していきたいと思っています。フィードバックを寄せていただく受付け用の窓口を作り、Web上で進ちょくなどを公表しながら進めていきたいと考えています。

――最後にOffimaにご興味を持たれた方にメッセージをお願いします

江幡氏 OffimaおよびOffima CADは、これまでとは仕事のやり方をガラリと変えることができるツールだと思っております。一度体験いただくのが一番だと思いますので、ご興味を持っていただけたら、ぜひお気軽にご相談をいただきたく思います。今後、公式に体験会の開催も予定しております。当社のホームページで随時ご案内しておりますので、ぜひそちらもご覧ください。

offima Offimaの費用イメージ。基本セットは、Offima(Offima CAD含む)の1年間ライセンスとTHIRDWAVE Pro(デスクトップPC)、初期教育費用が含まれている。もちろん、案件によって詳細は異なるので、まずは相談してほしい
offima Offimaを推進する“チームOffima”。今後の展開が楽しみだ

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February 17, 2020 at 08:00AM
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