アマゾンが同社のクラウド経由で、量子コンピューティングサーヴィスの提供を始めると発表した。スタートアップ3社のプロセッサーをクラウドから利用する仕組みで、自社のハードを開発するIBMやグーグルに加えて、アマゾンと同じようにクラウド経由で複数企業の量子プロセッサーへのアクセスを提供予定のマイクロソフトとともに、テック大手による量子コンピューター競争が加速することになる。
TEXT BY TOM SIMONITE
「The Everything Store(何でも買える店)」のアマゾンは、クラウドサーヴィスの品揃えも豊富だ。アマゾン ウェブ サービス(AWS)では、ディスクストレージから衛星の制御とデータの利用まで、160以上のサーヴィスが提供されている。
さらにアマゾンは、AWSに量子コンピューティングサーヴィスを追加すると、12月2日(米国時間)に発表した。競合となるIBMやグーグルは、この技術によってコンピューターがビジネスや社会に与える影響が大きく変わるだろうと言うが、アマゾンもそんな量子コンピューティングに関する大規模な取り組みに参入することになった。
企業による量子コンピューティング活用の手引を
まだ初期段階にある量子コンピューターの技術は、データを亜原子粒子の変則的な物理法則へとエンコードすることによって、さらに強力なデータ処理を実現する。これまでIBMやグーグル、スタートアップ数社が、量子プロセッサーのプロトタイプを構築してきた。フォルクスワーゲンやJPモルガンといった提携企業は、この技術を備えた新しいデヴァイスを、電気自動車(EV)のバッテリー開発や金融市場のモデル化などで活用する方法を模索している。
そこに、アマゾンが神秘的な量子コンピューティングの世界へと企業たちを引き込むべくサーヴィスを開始した。今月からアマゾンのクラウドプラットフォーム経由で、D-Wave Systems、IonQ、Rigetti Computingのスタートアップ3社が提供する量子ハードウェアを利用できるようになる。
このクラウドコンピューティングサーヴィスは、量子物理学で使われるブラケット表記にちなんで「Braket」と名付けられた。Braketには、量子プログラミングやシミュレーションツールも含まれるという。
実用的な作業ができる量子コンピューターを構築した例や、それに近い事例はまだない。AWSのテクノロジー担当ヴァイスプレジデントのビル・ヴァスは、量子時代に備えるため企業はとにかく量子技術を試すプロセスを開始すべきだと語る。「量子コンピューターの使い方を学び始めたいという多くの顧客と話しました」と、ヴァスは言う。
アマゾンはコンサルティンググループも立ち上げ、企業がビジネスで量子コンピューティングを役立てるためのサポートも実施するという。
自社ハード専売か、他社ハードの抱き合わせか
アマゾンは量子コンピューティングへの参入で後れをとってきた。ヴァスいわく、同社は4年かけて量子プロジェクトに取り組んできたが、マイクロソフトやIBM、グーグルの量子研究プロジェクトには、その倍以上の年月が費やされている。
IBMやグーグルは、最も高度な量子プロセッサーのプロトタイプを構築してきた。マイクロソフトは2社が使っているものに比べて成長途上にある技術に賭けているが、同社は最終的には実用面でこの技術がほかを上回ると主張している
量子クラウドサーヴィスを立ち上げた企業はアマゾンが最初ではない。IBMは2016年以降、独自の量子ハードウェアをネット上で利用できるようにしているし、グーグルも同様のサーヴィスを予定しているという。
クラウドコンピューティング事業でアマゾンに次いで第2位の座についているマイクロソフトは、複数形式の量子ハードウェアを利用できるサーヴィスを来月から提供すると発表した。このようなサーヴィスの提供を発表したのは、マイクロソフトが初めてだった。
自前の量子ハードウェアをもっていないアマゾンとマイクロソフトには、外部から調達したテクノロジーの仲介くらいしかできることはない。しかし、顧客は柔軟性を求めているため、そのようなビジネスモデルが量子産業の仕組みには適しているのだと両者は主張する。
「複数のマシンやテクノロジーを利用できる体制のほうが、ハードウェアやソフトウェアで唯一の選択肢しかない状況よりもはるかにいいでしょう」と、アマゾンのヴァスは言う。アマゾンがクラウドの顧客に対して、多くのプロセッサーやソフトウェアの選択肢を提供しているのと同じというわけだ。アマゾンは、これまでに2種類の量子プロセッサーと従来型コンピューターが一体となったプログラムを検証したという。
自社ハードウェアを開発中のアマゾン
アマゾンのハードウェア提携企業3社は、量子プロセッサーの3つのアプローチをそれぞれ代表している。
ベイエリアのスタートアップであるRigettiが使っているのは、IBMやグーグルと同じ超伝導量子回路だ。カナダのD-Waveも類似技術を使い、特定の操作に特化したプロセッサーをつくっている。また、メリーランド大学のスピンアウト企業IonQは、レーザー制御されたイオンを使う。
ゆくゆくはアマゾンの量子サーヴィスのメニューに、自社製の量子プロセッサーが含まれる可能性もある。同社の量子コンピューティング責任者で、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの教授でもあるシモン・セヴェリーニは、アマゾンが量子ハードウェアに取り組んでいることを認めた。ただし、詳細については明らかにしていない。
アマゾンは12月2日(米国時間)、カリフォルニア工科大学に量子コンピューティングの研究センターを設立することも発表している。このセンターでは、アマゾンの研究者がソフトウェアとハードウェア両面について学術界と提携していくという。
量子コンピューティングへの参入により、アマゾンは難解な物理学に取り組むだけでなく、量子技術の長期的な可能性と、その有用性が実現するタイミングをてんびんにかけることになる。量子コンピューティングに対する関心は高まっており、アマゾンはこの技術に興味を示す企業を引き入れることで、自らが競争から取り残されないようにする必要が生じてきていると、IDCのリサーチディレクターであるピーター・ルッテンは語る。
しかし、アマゾンが量子コンピューティングサーヴィスを、ほかの確立されたクラウドサーヴィスと一緒にAWSに並べ、コンサルティンググループまで提供することで、この技術の早期発展への期待が高まりすぎてしまうかもしれない。「ユーザーに失望感をもたらすリスクがあります」と、ルッテンは指摘する。
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