例年であれば、Microsoftの新ハードウェアに関する話題は秋の製品発表会が行われる少し前の夏ごろに出てくることが多いが、2020年は少し情勢が異なる。現在、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るっているが、この影響で製品計画に大きなズレが生じており、OEMパートナー並びにMicrosoft自身が2020年のホリデーシーズン向けにラインアップをそろえきれない可能性が高くなっている。
Windows 10Xデバイスは2020年内に登場しない
例えば、ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏は4月9日(米国時間)に公開した「Microsoft: Don't expect any Windows 10X devices this calendar year」という記事の中で、Microsoftが2020年のホリデーシーズンに投入を予定していたWindows 10X搭載の2画面デバイス「Surface Neo」の発売延期を計画しているという話に触れている。
これは同氏の情報源が、Windows 10XとSurfaceなどMicrosoftのハードウェア開発を担当するパノス・パネイ氏が自身のチーム内部に示唆したもので、同時にWindows 10Xを搭載して同じタイミングで登場が見込まれるサードパーティー製品についても同様に、2020年内には登場しないという。
一方で、もう1つの2画面デバイスであるAndroid搭載の「Surface Duo」については、特に延期の話が出ていないという。これを聞く限り、Surface DuoはSurface Neoに先駆けて登場することになるのかもしれない。
ただ、2020年のホリデーシーズンは本件に限らず全体に製品計画が大きくズレ込む可能性が高い。筆者の情報源ではまだ確認できていないが、iPhone新モデルの生産が1カ月程度遅れるという報道が複数出ている。
これ以外にもサプライチェーンの混乱や需要の逼迫(ひっぱく)、製造リソース確保の問題から、既に秋を目標とした製品の製造計画が立たない、あるいは目標数の下方修正に迫られる可能性が高くなっており、例年は海外における新学期シーズン(9月前後)、ホリデーシーズンに登場していたようなPCやスマートフォン製品のシリーズも、いくつかは年明けの2021年初頭に登場時期がスライドすることになるかもしれない。
これは製造数が多いものほど顕著で、リリースが遅れなかったとしても品薄になるのは避けられないかもしれない。Surface Duoは数が見込める製品ではないと考えられるものの、こうした状況に巻き込まれる可能性が非常に高いため、明確に延期の話が上がってきているSurface Neoほどではないにしても、投入時期が変わることを覚悟していた方がいいだろう。
開発遅延を生むもう1つの要因
ハードウェアのリリースに限らず、当面はMicrosoft関連の全てのことが影響を受けざるを得ない。2020年5月中旬に米ワシントン州シアトルで開催が予定されていた開発者会議の「BUILD 2020」がオンラインに移行することが既に発表されているが、ジョー・フォリー氏によれば、Microsoftの会計年度で2021年度いっぱい、つまり2021年6月までは全ての対面またはリアルイベントをオンラインに移行することが決定されている。
これはパートナーイベントや海外の講演も含まれ、例えばThe Vergeのトム・ウォーレン氏によれば、2020年9月への延期が既に発表されている「Computex Taipei 2020」での講演の他、2021年のCESやMWC関連、そしてBUILD 2021についても引き続きオンラインでの発表に留まるという。このあたりの経緯についてはMVP Summit開催に関する通知を公開したジニー・コーギー(Ginny Caughey)氏のTwitterへの投稿でも確認できる。
開発者の情報リソースについては別にオンライン配布でも問題ないが、BUILDや各種パートナーイベントにおけるメインは、やはり参加者同士のネットワーキングにあり、単純なオンライン移行では代替できない部分が現状では多い。
しかも本来は、Windows 10Xについて話す場にもなり得たBUILDカンファレンス2回分がオンライン移行することがほぼ決定されたため、このあたりの影響は計り知れない。元々Surface NeoやSurface Duoは、開発者に活用を促してエコシステムの下地を作ることが、発表から1年後にあたる2020年ホリデーシーズンまで搭載製品の発売を延ばした理由であり、ハードウェアだけでなくソフトウェア面の影響がより大きいと筆者は考える。
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2020年にやってくるMicrosoftのハードウェア
それでも、2020年内にいくつかのハードウェアはやってくる。それも、もしかしたらホリデーシーズンよりかなり早い段階で市場投入されるかもしれない。2019年10月に開催された製品発表イベントでは、前述の2画面デバイス2製品に加え、「Surface Laptop 3」「Surface Pro 7」「Surface Pro X」「Surface Buds」の4製品が発表された。
うわさだけ出ていて発表されなかったのは「Surface Go 2」で、登場はもう少し先と予想されていた「Surface Book 3」と「Surface Studio 3」だが、このうちGo 2とBook 3については製品スペックに関するリーク情報が出て話題になっている。
初報はドイツ語のニュースサイトWinFutureで、Surface Book 3についてはIntelの第10世代コアプロセッサを採用し、最大32GBのメモリに加え、オプションでNVIDIA QuadroのGPUを選択できる。
この他、Surface Go 2についてもスペックが少し紹介されており、LTE内蔵有無の他、1800×1200ピクセルのディスプレイを採用した11型のボディーになるという。筆者が聞く範囲では、この世代の製品はインタフェース回りにある程度変更が見込まれるとのことで、このあたりもチェックポイントもかもしれない。
何分、具体的な情報が現時点でこの1つしかないという問題はあるものの、例年に比べると初報が早い段階で出ており、ホリデーシーズンを待たずに製品が市場投入される可能性があるのではないかと考える。さらに登場タイミングが近付けば、より詳しい情報が複数出てくるだろう。
そんな中、1つ興味深い話題があったので紹介したい。MicrosoftやWindows関連の情報に詳しいことで知られるWalkingCatが、4月25日のTwitterへの投稿の中で面白い動画を紹介している。
これは「なぜSurfaceがメモリの外部拡張ができない機構を採用しているのか」という疑問を説明したもので、稼働中のデバイスのメモリ部分を液体窒素で凍結させて“然るべき”読み取り装置に取り付けることで、BitLockerの回復キーを含む情報の取り出しが可能になることが理由の1つだとしている。
同様に、なぜSurfaceがThunderbolt 3のインタフェースを採用しないのかという点について、同技術がメモリへのダイレクトアクセス機構を備えており、これが上記の理由でセキュリティ的にまずいからとも動画の提供者は分析している。真偽については不明だが、見方の1つとして興味深い話題だろう。
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